本試験問題集の中から、サンプルとして、何問か紹介します。
どうぞ、ご参照ください。
一、 ◦果樹園が売買され、引渡し・登記移転と代金支払いは1か月後、同時履行
する事とした。果樹園引渡前に生じた果実について、売主は買主に渡す
必要なし。
➡○。売買契約と同時に、果樹園の所有権が移転するのが原則(177条)。
とすれば、引渡し前に生じた果実は買主のもの、とも考えられる。
しかしこの場合、買主は代金を1か月間払わなくてよく、よって利
息も払わなくてよい。
そこで、相互の利益バランスから、売主は果実を収取できるとした。
~575条1項。
二、 ◦抵当不動産の第三取得者から、抵当権消滅請求に係る383条所定の書
面送付を受けた抵当権者が、送付を受けてから6か月以内に抵当権実行・
競売申し立てをすれば、請求に基づく抵当権消滅の効果は生じない。
➡×。抵当権者が抵当権消滅を回避するには、書面送付を受けてから
「2か月以内」に抵当権実行手続きをしないとダメ(384条1項)。
三、◦後順位抵当権者は、先順位抵当権者の被担保債権の消滅時効とは別に、先
順位抵当権自体の時効消滅を主張できない。
➡×。後順位者は、先順位者の被担保債権自体の時効消滅を主張できな
い(後順位者は、先順位者の被担保債権の消滅については、直接的利
益が無いから~判例の言)。
しかし、先順位抵当権自体の消滅は請求できる(判例)。
四、 Aは、Cに対する債権担保のため、Bの土地に抵当権の設定を受け、D
は、Bに対する債権担保のためBの土地に後順位の抵当権設定を受け
た。その後、AがBから土地を譲り受けた。Aの抵当権は、消滅しな
い。
➡○。土地につきAの抵当権と所有権が、同一人Aに帰属。しかし、土
地自体、第三者Dの権利の目的。混同の例外として消滅しない
(179条1項但書)。
五、 ◦AがBに対する債権担保のため、Bの土地に第一順位、CがBに対する
債権担保のため、Bの土地に第二順位の抵当権を各自取得。その後、Bは
Aに土地を代物弁済した。Aの抵当権は消滅する。
➡○。代物弁済すれば、AのBに対する被担保債権自体が消滅するの
で、付従性により抵当権も消滅。
※Aが「代物弁済ではなく、Bから買って土地所有権を取得」したケー
ス(四)では、Aの不利益・Bの予想外の利益を考慮し、同一土地
が第三者の権利の目的になっているとして、混同の例外(179条
但書)としてAの抵当権は消滅しないとの結論だった。
これとのバランス上、本問でも抵当権消滅しないと考えるべきと
と思われる。
しかし、深く考えずに、違うんだとして覚えよう。